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高速DDR4 SDRAMにより、新たな宇宙時代へ

収益性の高い市場機会を開拓するため、衛星オペレーション業界の各社は付加価値の高いサービスを提供することで差別化を図ろうとしています。付加価値の高いサービスとは、たとえば超高解像度画像技術やライブストリーミング動画、オンボードAIなどを活用したもので、軌道上で処理を行ってダウンリンク・トラフィックを低減しようとするものです。高スループットのペイロードに対する市場のニーズは、2019年から2024年までの間に12倍になると予想され、帯域幅は26,500 Gbpsに達する見込みです。

これらのアプリケーションはすべて、実装されるメモリの容量と速度が影響します。リアルタイムでもストア・アンド・フォワードでも、高スループットのペイロードではFPGA、マイクロプロセッサ、広帯域ADCおよびDACにおいて、ギガヘルツでの入出力レートが基本となります。例えば、12ビットのADCが1.5 GSPSでサンプリングする場合、毎秒18 Gbの生データが生成されるので、1分間の圧縮されたSAR情報には約70 Gbのストレージが必要です。これらのミッションに対応するには、現状の宇宙グレード・メモリ・ソリューションにおいて、入出力帯域幅、アクセス時間、消費電力、物理的なサイズやストレージ容量などを向上させる必要があります。

下の図は高スループットペイロードの代表的なアーキテクチャです。ここでは、宇宙グレードのFPGAまたは高速マイクロプロセッサを使用してオンボード処理を実行しています。最新の超微細加工による高品質なFPGAには、通常30 Mbほどのオンダイメモリが含まれています。CPUのオンダイメモリは通常30 Mb未満です。このアーキテクチャに基づくテレコミュニケーション、地球観測およびサイエンスペイロードではXilinxのXQRKU060、MicrochipのRTPolarFire®、NanoXplore等の宇宙グレードFPGAを使用しますが、こうしたアプリケーションによって生成される大量のデータを保存するには高速メモリが追加で必要です。

図1:高スループットペイロードのアーキテクチャ

次世代の高スループット衛星サービスでは、データの圧縮、大容量のデータ保存を伴うリアルタイム処理が必要になります。問題は、十分な容量、速度、信頼性を備えた、この用途に最適な宇宙グレードの大容量メモリとは一体どういったものなのかということです。

最も高速かつ大容量のメモリは、論理アレイがセルで構成されたSDRAMです。基本コンポーネントはそれぞれキャパシタと制御ゲートのFETで構成され、各セルに1ビットが保持されます。下図はシンプルな4ビットメモリです。トランジスタはそのロウ(行)の電圧により開閉し、接続された各キャパシタを充電または放電します。必要な「ワード線」が充電されると、カラム(列)セレクタがオンになり、必要なキャパシタにアクセスしてリード(読み出し)/ライト(書き込み)オペレーションが可能な状態になります。また自然放電があるため、セルは周期的にリフレッシュします。これにはデータのリードとリライトを伴います。

2SDRAMビットセルとSDRAMチップ構成

SDRAMアーキテクチャでは、メモリセルが2次元マトリックスのアレイとして構成されています。特定のビットを選択するには、まず必要なロウを指定し、それから特定のカラムを指定します。必要なロウがオープンすると、複数のカラムへのアクセスが可能になり、一連のリード/ライトバーストによって速度が向上しレイテンシが低減します。

ワードサイズを増やせるよう、メモリには複数のアレイがあります。つまり、リード/ライトアクセスが要求された際、メモリが各アレイから1ビットにアクセスするのに必要なアドレスは1つだけなのです。

全体的なメモリ容量を増やすため、図に示すように、SDRAMはバンクを増設できる内部構造になっています。さらにバンクをインターリーブすることで、性能が向上し、個別アクセスが可能になります。

リードまたはライト実行時は、まずメモリコントローラからACTIVEコマンドが発行され、必要なロウとバンクをアクティブにします。目的のオペレーションが完了すると、PRECHARGEコマンドにより一つ以上のバンクの特定のロウがクローズします。新たなロウは、前のロウがクローズするまではオープンにできません。

SDRAMオペレーションは、チップセレクト(CS)、データマスク(DQM)、ライトイネーブル(WE)、ロウアドレスストローブ(RAS)、およびカラムアドレスストローブ(CAS)などの制御信号により実行します。後者3つの制御信号について、発行されるコマンドを以下に示します。

表1:SDRAMコマンド真理表

1992年にリリースされて以来、SDRAMは大きく進化してきました。初期バージョンはシングルデータレート(SDR)のSDRAMで、内部クロック周波数が入出力レートと同じでした。SDR SDRAMでは、クロックサイクル内で可能なリードまたはライトは1回だけで、次のオペレーションを開始するには、実行中のオペレーションが完了するまで待つ必要があります。

ダブルデータレート(DDR)SDRAMは、データを双方のクロックエッジで転送することで、クロック周波数を上げることなく、より広い帯域幅に対応します。クロック周波数を上げることなく、入出力の転送速度を2倍にできます。これは2nプリフェッチアーキテクチャにより達成しています。ここでは内部データパスが外部バスの幅の2倍であるため、内部周波数が外部転送速度の半分で済みます。シングルリードアクセスごとに、2つの外部ワードをフェッチします。ライトオペレーションの際には、2つの外部データワードを内部で組み合わせ、1サイクルの間に書き込みます。DDR1は真のソース同期型で、双方向データストローブを利用してクロック周期ごとにデータを2回取り込みます。

DDR2 SDRAMでは、外部バスがDDR1の2倍の速度で動作するため、入出力転送レートが2倍になります。これは4nプリフェッチバッファにより達成しています。ここでは内部データパスが外部データバスの幅の4倍になっています。DDR2はDDR1の半分のクロック周波数で動作しながら、同じ転送速度を達成します。つまり、同じレートであれば情報帯域幅が2倍になるのです。

DDR3 SDRAMでは8nプリフェッチアーキテクチャにより、外部バスの動作速度はDDR2の2倍、入出力転送レートが2倍になります。内部データパスの幅は、DDR2では4ビットですが、DDR3では8ビットです。DDR3はDDR2の半分のクロック周波数で動作しながら、同じ転送速度を達成します。つまり、同じレートであれば情報帯域幅が2倍になるのです。

表1では、衛星や宇宙探査機メーカーが現時点で利用できる宇宙グレードのSDRAMについてまとめています。

2:現在の宇宙グレードSDRAMの性能

次世代の高スループット衛星サービスを実現するにあたって今後のペイロードに必要なのは、より高速で大容量でありながらコンパクトかつ省エネルギーのオンボードストレージです。小型衛星の配置ではサイズや電力の制約があり、各社はリアルタイムアプリケーションに向けたより高いメモリ帯域幅を求めています。

Teledyne e2vは、宇宙アプリケーション向けとして、初の耐放射線SDDR4 DRAMをリリースしました。このDDR4T04G72は、72ビット、4 GB (32 Gb)のメモリで、目標とする入出力レートは2400 MT/sです。また、有効帯域幅はECCありの場合153.6 Gbps、なしの場合172.8 Gbpsとなっています。本製品は下図の通り、15 x 20 x 1.92 mmのPBGAパッケージで、391個のボールが含まれており、ピッチは0.8 mmです。動作温度範囲は-55~+125°Cまたは-40~+105°Cとなっています。共晶はんだ仕上げも可能です。NASAレベル1およびECSSクラス1の品質認定を受けています。製品ロードマップに基づき、8 GB(64 Gb)バージョンもリリース予定です。

3:耐放射線仕様のDDR4T04G724 GBDDR4メモリ

耐放射線性能に関しては、DDR4T04G72は指定のSELのしきい値が60.8 MeV.cm2/mgより大きく、SEUおよび SEFIのしきい値はそれぞれ8.19および2.6 MeV.cm2/mgです。目標とするTIDイミュニティ値は100 krad (Si)です。

4 GBのDDR4T04G72は5つのダイを含むMCMで、うち4つのダイはそれぞれ1 GB (8 Gb)のストレージがあり、512 Mb x 16ビットが2つのグループで構成され、それぞれには4つのバンクがついています。信頼性向上のため、72ビットデータバスを作成し、64ビットをデータ用に、8ビットをエラー検出・訂正用に使用します。このECC機能は5番目のダイで実施します。本デバイスでは内部8nプリフェッチバッファを使用して高速動作を最大限引き出し、プログラマブルなリード、ライト、アディティブレイテンシを可能にしています。

DDR4の供給電圧は通常1.2ボルトです。DDR4T04G72と既存の宇宙グレードSDRAMの代表的な消費電力やサイズを、以下の表に示します。電力損失は、特定のデバイスのアーキテクチャ、クロック周波数、供給電圧、実行するオペレーション、パートのステート(アクティブかプリチャージか、リード/ライトか)、各ステートに使われる時間、バンクのインターリーブの使用の有無、入出力回路の実装状況(ターミネート)などに大きく依存します。実機でどのようにSDRAMを使用するかにより、消費電力は大きく変わってきます。システム設計において考慮すべき大切なことは、どのようにメモリにアクセスしPDNや熱ソリューションをどう選択していくかということです。DDR4には2.5ボルトレール、VPPがあります。これはワード線をブーストして効率を上げるためのものです。

表3:宇宙グレードSDRAMの性能比較表

DDR4T04G72のIBIS、SPICE、熱モデル、電力推定表はTeledyne e2vで用意しています。また、DDR4コントローラIPを生成するための構成ファイルもVivado® Design Suiteに含まれています。これはXilinxの宇宙グレードFPGA、XQRKU060を御使用頂く際に利用できます。

DDR4 SDRAMのDDR4T04G72は、耐放射線のクアッド64ビットARM® Cortex® A72 CPUと組み合わせて提供できます。これは1.8 GHzで動作し、以下の図に示すように、44 x 26 mmとコンパクトな単一基板のデバイスです。この宇宙グレードモジュールを共晶はんだとするかRoHS対応とするは現在検討中です。

どちらをご希望でしょうか。メールでご意見をお聞かせください(メールアドレスはこちら:hisashi.nakata@teledyne.com)。

4:耐放射線QLS1046-4GB ARMクアッドコアDDR4 メモリDDR4T04G72との組み合わせ

DDR4により、衛星業界ではより高いスループットのオンボードプロセッシングが可能になり、データ処理時間も改善されます。このため、超高解像度画像技術、ライブストリーミング動画、オンボードAIなどを利用した新たな地球観測、宇宙科学、テレコミュニケーション・アプリ―ケーションを実現することができます。

これまでの6年間、一部では既に実用化されていた大容量メモリの帯域幅ですが、DDR4T04G72の登場により、初めて衛星や宇宙探査機メーカーでも利用できるようになりました。既存の品質認定されたDDR3 SDRAMと比較すると、DDR4T04G72は最新の宇宙グレードFPGAやマイクロプロセッサを使用することができ、以下の特長があります。

  • メモリ帯域幅は62%向上、現在の2倍の転送速度を実現
  • ストレージ容量は25%増加
  • サイズは76%縮小

本記事の執筆は、Spacechips創業者でCEOのラジャン・ベディ博士によるものです。

このトピックへのご質問などがございましたら、当社担当者にメールにてお問い合わせください(メールアドレスはこちら: hisashi.nakata@teledyne.com.